JOURNAL 読む東広島
東広島のひと、まち、もの、とき。
知れば知るほどこの街はおもしろい!
実りのもとは、
世界からも求められる土づくり。
アグリ・アライアンス株式会社 脇農園
about AGRI ALLIANCE
前身の「脇農園」から2016年に法人化したアグリ・アライアンス株式会社は、東広島市八本松町、田畑が広がる原という地域で、アスパラガス・茄子・白ネギ・落花生を中心に、栄養価が豊富な様々な野菜を栽培しています。
脇農園を立ち上げた脇 伸男さん(写真中央)のもと、伸男さんの長男 伸哉さん(写真右下)ほかご家族、新規就農を目指す若者、カンボジアからの実習生など総勢13名の従業員が集まり、日々美味しい野菜づくりに取り組んでいます。
「農業は土づくり」。
並々ならぬ土へのこだわり。
ざっくばらんな日常の雑談から始まった脇 伸男さんの話。気づけば、噺家がするりと羽織を脱いで、話の枕から本筋に入っていくように、いつの間にか伸男さんたちが強くこだわっている「土づくり」の話へと広がっていきました。
「わしらは土をつくっとるんよ。」
潔くそう言い切る伸男さん。この言葉にこそ、アグリ・アライアンスが考える農業の全てがこもっているのです。さて、具体的にどんなこだわりがあるのでしょうか。
「みんな、野菜は栄養があって美味しいものだと思っとるでしょう。でもそれは当たり前じゃないんです。野菜は根から養分や水を吸い上げて栄養を蓄えていく。それなら根が伸びる深さすべてをカバーする土が豊かでないといかん。それでこそからだが喜ぶ野菜になると思っとるんよ。茄子でもアスパラでも、調理せず生で食べて美味しい野菜、そんな野菜をつくりたい。そのためにうちでは植物性の有機発酵堆肥を通常の5倍使用して、一般的な圃場(ほじょう:畑のこと)の倍以上の深さに整備しています。」
さらに、伸男さんたちが大切に考えるのは土壌の「質」についてだけではありません。圃場の「水はけ」の良さもとても重要だと話します。
「羊羹のような土ではなくカステラのような土をつくろうと常々言うとるんよ。つまり、水をため込むのではなく、野菜が呼吸できるように酸素を多く含んで、必要以上の水分は逃げていく状態。圃場の下には暗渠(あんきょ)という水分を溜めるタンク機能を備えた溝を作り、雨などで必要以上に水を含んだときには余分な水は全て外に流れていくように整備しています。だから、うちの圃場は豪雨の翌日もぬかるまないよ。」
確かに、取材当日は朝まで雨が降っていたにもかかわらず、圃場のどこにもぬかるみはなく、地面はふかふかしっとり!
伸男さんがこだわる「土づくり」とは、豊かな養分の土をつくるということに加えて、野菜たちのために地下の排水設計までも計算し、一から整備することなのです。
世界から求められる土づくり。
そして東京大学との共同研究。
アグリ・アライアンスの土づくりは次第に注目を集め、国連の視察団も訪れるなど国内外から視察希望者を受け入れるように。伸男さんは日本全国、さらには海外へも赴いて土壌づくりの指導をおこなっています。
また、東京大学大学院農学生命科学研究科の田之倉優特任教授に高く評価され、田之倉教授の研究室とグッドソイルグループ(東京都)、アグリ・アライアンス3者の共同研究農場を設立。
「わしらは試行錯誤しながら経験を重ねて土と野菜をつくることしかできんけど、大学の先生やいろんな人から知恵をいただいて高めていくことが大事だと思っとる。そこで得た新たな知識をもとに、挑戦と改善を繰り返してより良いものをつくっていきたい。」と伸男さん。より良いものづくりの背景には、謙虚さと飽くなき探究心がありました。
絶品! 完全天日干し落花生の
「ピーナッツペースト AGRIA」。
アグリ・アライアンスの落花生栽培は、もともと白ネギの圃場の連作障害(何度もネギをつくると土壌の質が悪くなっていく)の対策のために別の科のマメ科植物を栽培して土壌環境を整える目的で、国内自給率の低い落花生に着目して始められました。
「こだわりの土で育てた落花生を、直射日光に当てず1ヶ月半かけてじっくりと完全天日干しし、乾燥熟成しています。大変に手間のかかる工程ですが、これによってうまみが凝縮されて美味しくなるんです。」
オリジナル商品『ピーナッツペーストAGRIA』は、伸男さんの三男のダイちゃん(元イタリアンシェフ)が中心となり開発されました。強めに自家焙煎した落花生を、ポリフェノールが豊富な薄皮ごとペーストにして、呉産の藻塩と国産きび砂糖で味をととのえて仕上げています。これがコク深くピーナッツ本来のやさしい甘みで本当に絶品!
トーストにシンプルに合わせるだけで口の中に幸せが広がります。
土をつくり、畑の地下を整備し、どれだけ手間隙をかけても、「良いものをつくる」ことに妥協しない。そんなアグリ・アライアンスのこだわりは、人々に安心とからだが喜ぶ食を届けたいという使命感からきているのかもしれません。
「去年美味しい苺ができたから、今度はピーナッツアイスと苺アイスをつくってみたいんよ。」と目を輝かせて語る伸男さん。大ベテランになっても目標を持って仕事を楽しむ姿に、取材班一同心を打たれたのでありました。